ローデン・クレーター・プロジェクト
(フラッグスタッフ、アリゾナ、アメリカ合衆国)

ローデン・クレーターが視界に見えたとき、この山は、見つけられるべき山だったと感じました。

それぐらい道中で見た山とは、違っていました。すば抜けて高い訳ではありません。ただ、回りのどの山とも連ならず、孤絶して、草原から、ぽつりと、孤高にそれだけが立ち上がります。

アーティストのジェームス・タレルさんが、30年以上の年月を掛けて、構想し、実現しつつあるアートワークが、アリゾナの高原につくられたローデン・クレーター・プロジェクトです。クレーターの名は、最初にこの荒野に入植した家族の名にちなみます。

自家用飛行機を駆って、探し出したその死火山ローデン・クレータを利用して、壮大なランドスケーププロジェクトが始まりました。

赤土に覆われた山の中腹の入口を入ると、地中を掘削した長いトンネルが続き、その先に、メインの噴火孔と、噴煙孔を利用した、2つのスカイスペースが現れます。マグマの流れを辿り、噴火孔まで旅をしている気分です。

噴火孔は正円に加工され、地中に設けられた大きな部屋から、孔越しに空を眺め、日の出、日没の移り変わる様を体験します。

光の館と同じように、日が暮れるに連れ、噴火孔越しに見える空の色は、実際の空の色より深い藍色に変わって行きます。そして、アリゾナの地では、光だけではなく、風の音も切り取られて、噴火孔の底に響き渡ります。

支道のトンネルを上がると、すり鉢状の火口の底に辿り着きます。つねに西風が吹き付けるために、片側の火口の縁が、せり上がっていたそうですが、今は、それもまた、水平な正円に加工され、丸く切り取られた空が現れます。

そこから、急な斜面を上り、火口の縁に立つと、そこには、聖別されたような、雄大で、見飽きることのない風景が、360度遮るものなく、広がっています。草も、虹も、雲も、風も、雨も、牛も、どんな些細な自然の出来事さえ見逃すことのない展望です。

遠くから見た時だけでなく、そこから見返す風景によっても、この場所は特別だったのです。

噴火孔にしろ、火口にしろ、タレルさんによって、人為的に再解釈されたランドスケープが、回りに広がる自然の風景を相対化して行くようです。

今では世界中、さまざまな場所に広がるスカイスペースですが、同じような構造を取る故、逆に、場の違いを喚起させ、映し出すアートであることを、あらためて実感します。そこから見える微妙な空の違い、その位置するランドスケープの違い、そして、そこに到るまでの時間や空間の違い・・・。

プロジェクトは建設途上にあり、完璧な状態でないアートワークの写真は控えてほしい、とのご要望から、アートワークに関わらない写真のみとなりました。

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ローデン・クレーター

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ローデン・クレーター・プロジェクト (1977 - )

        Photo by Daigo Ishii