アーコサンティ
(コーデス・ジャンクション、アリゾナ、アメリカ合衆国)

アーコサンティも、また、荒野に忽然と現れます。

建築家パオロ・ソレリが、アーキテクチャーとエコロジーの造語、アーコロジーの理念の下、アーコサンティの建設を開始したのは、1970年のこと。

拡大して無機的な現代都市に対するアンチテーゼとして、職住一体で、エネルギーロスの少ない、集中型の有機的都市をつくろうとしました。今でこそ、猫も杓子も、コンパクトシティーとかサスティナビリティーとかエコロジーとか声高に言いますが、ソレリのそれは、筋金入りです。

フランク・ロイド・ライトの下で学んだ後、設計事務所を構えたソレリは、有名なウィンドベルの販売で、資金の目処を付けると、アリゾナの荒野に、アーコサンティの建設を始めます。世界中からのボランティアとともに、自力建設していますが、40年経った今の完成率は、構想の5パーセント。

正直を言えば、コンセプトには共鳴するものの、アウトプットの評価は、長い間、迷うところでしたし、今回、実際に見ても、困ってしまいます。

有機的ではあっても、エネルギー効率を考えると、こういうデザインにならないだろうし、現代都市のスラムの改良計画として実現できればよかったものを、アリゾナの荒野の生態系の中に開発されると、エコロジーの主旨とも微妙に軋轢が生まれます。

バイオスフィア2に欠けている、エモーショナルな反応を生むデザインは、空間に投影されており、それがアーコサンティをアーコサンティたらしめていますが、個人の家ならともかく、不特定多数の人を想定する都市としては、少し強い感じもあります。

というか、大体、これは、都市なのでしょうか。アーコロジーという言葉自体が、建築という言葉を含んでいるから、都市のように大きな建築を志しているのであり、ふつうの都市との隔たは当然なのかもしれません。

建築のデザインも、資金源のベルも、すべてソレリのデザインによる、というつくり方自体、建築的です。そして、絶対的なデザインというか知に支配されているコミュニティーは、さまざまな勝手な部分が集積して、偶発性を内蔵する都市とは、素性が違います。それが、現代都市へのソレリ流のアンチテーゼとも言えそうですが。

でも、どこか居心地が悪い。ここで暮らすことがイメージできません。アーコサンティの考え方やデザインから逸脱すると、外に出るしかなさそうです。例えば、違うウィンド・ベルのデザインがひらめいても、ここでは、実現できないだろうということ。他人の家にお邪魔している気分です。

そして、家族のイメージが見えません。全員が家族、というレトリックはあるとしても、ここで出会った同士が家族となって、子供を産み、赤ん坊の泣き声が聞こえ、洗濯物が干され、料理のにおいが漂うという、家族がいれば、当然あるふつうの風景が、忽然と消えています。

自力建設の速度では、定住者の住居を用意できない事情もあるでしょうが、ソレリを継承して、発展させる次の世代が見えないのも、そんなこんなに関係がありそうです。

そして、時代の変化に対する検証がなされているのか。ITの進歩の中、集中して住むことの意味と意義も変わりました。ただ、ソレリの本意とは別に、ふつうの都市以上のスピードで、人が入れ替わることが、現代都市の未来を先取りしている印象もあり。

兎にも角にも、これだけ、いろいろと考えさせること自体が、アーコサンティの持つ力です。そして、40年間、つくり続けた意志に、感服しますし、そういう時間の掛かったものを、性急に判断することに、危惧も感じます。100年後の人が決めることなのです。

御年90のソレリが、建設を開始したのは51歳のときのこと。僕らにも、今から、自分自身のアーコサンティをつくる時間は残されているようです。

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交通
フェニックスのSky Harbor空港から車で1時間半。
フェニックスのSky Harbor空港から、Prescott行きのシャトルバスShuttle UでCordes Junction下車。予め、Arcosantiにお願いすれば、バス停留所まで送迎可。バス停留所からは、徒歩3キロ程度。

Shuttle U

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アーコサンティ (1970 - )

         Photo by Daigo Ishii