ヒルカントリーへ - 3:
ヌワラエリヤの街並
(ヌワラエリヤ、スリランカ)

シンハラ語で「光の町」を意味するヌワラエリヤは、スリランカ人の新婚旅行先人気No.1の町です。

標高1890m、低地の暑さが嘘のように、涼しく、時には暖炉さえ必要なほどです。コロニアル建築が点在し、ゴルフ場、英国式の競馬場、湖、植物園、大木の街路樹が、リゾート気分を高めます。スリランカの金持ちの別荘地であり、ハイシーズンの4月には、上流社会の社交場として、ホテルの宿泊料も青天井だそうです。「スリランカの軽井沢」と言ったところでしょうか。

1819年にイギリス人外科医ジョン・デービーが、サナトリウムの場所として選んだのも、涼やかな気候ゆえ。それが、町の始まりとされています。しかし、これは、いつものことですが、西欧人が勝手に「発見」したと思いこんでいるだけ。実際には、ヒンドゥー教の伝説にも近くの地が現れ、キャンディ朝の王は、水の豊かなこの地を、「自然の豊かさを守ることは、水の豊かさを守ること。水の豊かさを守ることは、稲田を守ること」として保護し、建物をつくることを避けたそうです。

イギリス人による開発で避暑地として整備され、その後、コーヒー、茶を含むさまざまな作物が持ち込まれて、農業センターとしても発展します。町の東の大きな湖も、沼地をイギリス人が排水工事した成果です。英国人の建てたコロニアル建築の多くは、今は、ホテルに転用され、その質の高さがこの町の魅力になっています。

ただ、実際に歩いてみると、思ったよりは、歴史的な空気を感じません。市場や商店の集まる中心部は、ふつうのスリランカの田舎町。その回りに、一戸建ての庭付き住宅街が広がっています。しかし、ホテルや郵便局など、町を代表する歴史的ランドマークを除けば、あくまでもコロニアル「風」、どこか違うような違わないような・・・。「風」なのは、ヌワラエリヤの町に景観条例があるらしいから、それに基づいてつくられた新しい家ということでしょうか。

景観条例は、ヌワラエリヤの文化度の高さを示しているとしても、一戸あたりの敷地が思ったより小さく、公園やホテルを除くと、高い樹木がまばらなので、遠くの住宅までお見通し。「見えそうで見えない」高級住宅地感に欠けます。

第3世界の金持ちの別荘地としては、意外と控えめに感じましたが、それでも、ここは、スリランカの中で、空気の特別な町です。イギリスが残して行った植民地主義が、独立して50年経つと、どんな風に変わるのか。そのスリランカ版の答えを楽しんで下さい。

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交通
コロンボからバスで6-7時間。鉄道は、最寄り駅のナヌ・オヤまでコロンボから7-11時間、ナヌ・オヤからバス、スリーウィーラーで15分程度。

宿泊施設のリンク
Grand Hotel
Hill Club
Heritage
St, Andrews
Tea Factory
旅行の際に調べた情報であり、評価については、各人でご確認下さい。

参考文献
Lonely Planet Guide 'Sri Lanka' (Lonely Planet Publication, 2006)

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ヌワラエリヤの街並

         Photo by Daigo Ishii