LRTに乗って
(フェニックス、アリゾナ、アメリカ合衆国)

市電が走っていると、どうして乗りたくなるのでしょうか。

論理的には、バスの方が、敷設の手間も掛からず、変更や延伸のフレキシビリティーも高いし、専用軌道でない限り、大抵の都市で、市電は、バスのスピードにかないません。環境に優しい電気自動車や架線式トロリーバスだって、あります。なのに、どこでも、市電ばかりが混雑し、それは、自動車社会の極みのフェニックスでも同じでした。ガラガラのバスを尻目に、市電は、結構ぎゅうぎゅう。客層も、ミドルクラスかインテリ風で、いい雰囲気です。

個人的には、融通の効かなさが、理由かなと考えます。バスのように、気楽に開設が出来ず、万全の準備が必要で、完成すれば、簡単には撤退しません。線路も停留所も恒久的。スムーズな加速減速だって、実は、熟練の技術があってこそ。決意の強さや、不自由さのつくる確固とした存在感が、人を呼ぶのではないでしょうか。

さて、フェニックスで、市電(LRT)が営業開始したのは、2008年のこと。今のところ、フェニックス北西部からダウンタウンを経由して東部のメサ市まで、 32キロの1路線のみです。

「パーク・アンド・ライド」。都市計画の教科書でおなじみのこの言葉に、フェニックスのLRTで出会いました。自宅から駅まで車で行き、駅前の駐車場に車を置き、そこから、電車で通勤するスタイルを指します。自動車社会のアメリカで、はるか昔に生まれたスタイルが、21世紀のフェニックスで、きちんと継承されていました。

LRTの郊外の大きな駅には、バスの乗換ターミナルがあり、その奥が、広大な駐車場となっています。乗換ターミナルや、駐車場は、見通しがよく、危ない空気はありません。夜はゲートが閉じますが、終電までは無料で、自由に駐車できます。日本にもありますが、小規模で、登録制だったりすると、効果は半減。

そして、LRTも、乗り換えのバスも、すべて、自転車積み込みOKで、「バイク・アンド・ライド(サイクル・アンド・ライド)」も実現しています。ちなみに、奥さんが旦那を駅まで車で送るのは、「キス・アンド・ライド」。旦那が奥さんを送るのも、多分、「キス・アンド・ライド」。

世界でもっとも環境負荷の大きい生活スタイルを謳歌していたアメリカですが、環境問題に先進的な東海岸西海岸でもない、ここフェニックスへも、環境と折り合いを付ける流れは、着実に押し寄せています。

停留所もその流れを映し、ホームには、ベンチの屋根となる大きな木を植え、蔓性植物を絡ませた巨大なグリーンウォールが、停留所を遠くから見分けるサインとして立ち上がります。

そして、波頭のような駅の屋根や、サイン、ベンチ、さらに、嬉しいことに、日本の近畿車両が製造した流線型の車両も、デザインの感度が高く、環境に配慮することは、お洒落なのだというメッセージを発信しています。

さて、市電巡りの締めくくりは、終点のシカモア停留所名物(とは今のところ誰も言っていない)、メトロドッグ。正直を言えば、パンにソーセージの、ふつうのホットドッグでした。

僭越ですが、環境型LRT名物になるアドバイスをするなら、まずは、小麦は遺伝子操作なしで、有機飼料育ちの豚肉ソーセージに、有機栽培の野菜サラダを付け合わせ、それを、車体をモチーフにした流線型容器に入れるのはいかが?。それから、調理は、二酸化炭素を発生しない電気コンロでね。

英語版へ移動する

Google Maps で場所を見る

交通
フェニックスのLRT - Metro Valleyの沿線。

リンク
LRT - Valley Metro

City of Phoenix
Visit Phoenix

宿泊施設のリスト
Aloft Tempe
Arizona Biltmore Hotel
Camelback Inn
Hermosa Inn
Hotel San Carlos
Hyatt Regency Scottsdale Resort and Spa at Gainey Ranch
Royal Palms Resort and Spa
The Canyon Suites at The Phoenicia

Americas Best Value Inn-Downtown Phoenix
Days Inn Scottsdale Fashion Square
Motel 6

Maricopa Manor B & B Inn
旅行の際に調べた情報であり、評価については、各人でご確認下さい。

参考文献

Upload
2018.01 日本語版+英語版

Update 

← previous  next →

Copyright (C) 2010 Future-scape Architects. All Rights Reserved.
無断転載は、ご遠慮いただくようにお願いいたします。

← previous  next →

フェニックスのLRT (2008)

        Photo by Daigo Ishii