青森の屯所 - 3
(黒石、青森、日本)

弘前から電車で30分、黒石の町には3ヵ所の屯所が残されています。八戸や弘前とは、また趣を変え、和の空気を残し、物見台も現存しています。

一つ目は、こみせで有名な中町の街並から一筋入った甲徳兵衛町にある第三消防部屯所。大正13年(1924年)に建設されたもので、青森にある歴史的な屯所の中では、もっとも背が高いそうです。

左右対称の細長いプロポーションですが、1階の消防車置き場から、2階の広間、そして、物見台へと、少しずつ後退する壁、三層の屋根の重なり、そして、妻を強調したデザイン(水色に塗られた入母屋の破風と最上部のR状の屋根)が、そびえ立つ威圧感を和らげます。

1階屋根は、昭和3年に、新しい消防車を入れるために、2階のバルコニーを壊し、増築されたもので、元々のものではありませんが、その屋根の効果で、建て屋に物見台を唐突に載せた他所の屯所に比べて、上と下の連続感をつくることに成功しています。屯所建築の一つの極みに見えました。

二つ目は、元町の交差点にアイストップのように立つ第二消防部屯所。大正9年(1920年)につくられ、黒石ではいちばん古いものです。

甲徳兵衛町に比べると、上下の連続感は弱まります。物見台が偏芯して見えるのは、正面右手の通用口部分が切り欠かれているためですが、道路側のファサードに対するシンメトリーの外し方は、日本的にも見えます。

1階の消防車出入口には、注連縄が回され、建物の和の空気のせいもあって、違和感なく溶け込んでいます。他では見掛けませんでしたが、火事という凶事を扱う仕事では、団員の無事や迅速な鎮火を祈るためにも、本来、不可欠だったのかもしれません。

この二つは、近年、オリジナルに戻すため、改修されたようで、黒石の町に時間を呼び戻します。

3つ目は、町中から少し外れた山形町に立つ第一分団第一消防部屯処。こちらは洋風のデザインで、昭和21年(1946年)の建設。改修の波は、まだ届いておらず、入口はスチールシャッターのままですが、注目は、屋根の破風の換気窓の上に記された紋。丸い輪に水という字が描かれています。

高い建物の少ない黒石の町では、いまだに街並から屯所が顔を出しています。ヨーロッパでは、小さな町でも、教会の尖塔がいくつも家々の屋根から飛び出し、コミュニティーの拠り所が可視化されています。黒石の町を歩いていて、ふと思ったのですが、日本では、各町内に1個所ずつあった屯所が、教会とまでは言わないものの、コミュニティーの協力体制の証として、そして、コミュニティーを守る砦として、景観的な拠り所になっていたのかもしれません。

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交通
弘前駅から弘南鉄道で30分(1時間に2本)、黒石で下車。黒石駅から徒歩15分。

リンク
黒石市役所
黒石観光協会

青森県観光情報サイト
あおもりの文化財
文化遺産オンライン

宿泊施設のリスト
黒石観光協会 - 泊まる

参考文献

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Photo by Daigo Ishii