八戸に学べ:八戸の市場
館鼻岸壁朝市(八戸、青森、日本)

3月半ばから12月まで、毎週日曜日の日の出から午前10時頃まで、八戸港の岸壁で開かれる館鼻岸壁朝市。「協同組合港日曜朝市」と「海の八戸NPO」の主催で、出店数は、350店。始まったのは2004年のことで、歴史はありませんが、今では、毎回1万人、多いときには3万人も訪れる八戸の観光の目玉となっています。八戸市も力を入れており、バスのルートから外れた朝市まで、早朝、観光客を運ぶバスを走らせているほどです。

6時に到着してみると、すでにたくさんの人で大にぎわい。その人出を見るだけで、わくわくして来ました。

会場は、L字形をした巨大な岸壁。漁港のような風情はなく、回りと言えば、味気ない事業所ビル、クレーン、ベルトコンベア、大型倉庫、高架道路と言った類で、ふだんは、大型船が横付けし、トラックやフォークリフトが行き交う、活気はあっても、無機的な産業港なのでしょう。

ただ、これだけの人と店が現れる日曜日だけは、小さな村が出現したような、明るい空気に様変わりしていました。回りに日差しを遮るものが何もないこの環境が、かえって朝市をからっとさせているようでした。

以前開かれていた場所からこちらに移ったのは、近隣からの苦情が原因だったという噂ですが、ここなら、回りに気兼ねせず、音も匂いも出し放題、そして、巨大なスペースの半分を大駐車場にしたモータリゼーション対策もばっちりです。以前よりパワーを増したというこの朝市を見ると、災い転じて福と為すと言うか、七転び八起きと言うか、ここでも、八戸のソフト力の強さを再認識するのでした。

そして、また、ここは、東日本大震災の津波で大きな被害を受けた場所でもあります。大きな船が乗り上げ、岸壁も回りの建物もやられてしまいました。それでも、4ヵ月後に市を再開したのは、八戸のソフトの持つ回復力の強さの証。ちなみに、その4ヵ月間、内陸部で仮に開いていた朝市は、好評のため、館鼻岸壁の朝市が再開した後に、常設の朝市に格上げされたそうです。ほんとうに八戸は強い。

さて、何から手を付けたらいいか、というぐらい、おいしいそうなもののオンパレード。入口から気になったものを食べて行くと、奥まで辿り着けそうもないので、先ずは、一回り。日本有数の漁獲を誇る八戸だから、鮮魚から、焼いた揚げたの魚料理は当然ですが、陸奥湊の朝市と違うのは、魚系以外の業種が充実している、というか、勝っていることではないでしょうか。

ちぢみ、肉まん、焼きそば、サンドイッチ、焼きたてパン、焼鳥、手羽先揚げ、「はるみも食べた」イカのイサバ揚げ(はるみって誰?)、春巻、おでん、ケーキ、牛乳、コーヒー、甘酒、蜂蜜、フランクフルトソーセージ、牛すじ、インド系シェフのカレー、豆腐、新鮮野菜、野菜の総菜、切り花、植物の苗、しいたけの原木までは、想定範囲でしたが、みしん屋、鳥かご屋、鋳掛け屋、服屋、瀬戸物屋あたりになると、そう出て来るかと感心し、車の展示場に至っては、やられました。

車は別として、食べ物は安く、品揃えもバラエティーに富んでいるから、これだけの人がやって来るのですね。そして、出店者も、八戸だけでなく、十和田や、遠く青森や野辺地からも来ていました。

朝7時前からのフォークライブイベントも、また予想外。暮れ掛かった光の中で、ビールでも飲みながらならともかく、高く明るくなって来る日の下では、これだけは、客の乗りも今一つ。相当陽気で派手な音楽でないと、朝の明るさには太刀打ちできないのではないでしょうか。

一休みした屋台の女主人は、実は主婦で、同級生と始めたそうです。とにかく、いろいろな人と知り合うのが楽しくてやっているとのこと。朝2時に起きて、おにぎりと汁物を用意し、会場に着くのが4時。その頃には、すでに常連が待っています。組合の会長から、八戸の観光振興のために、とにかく休まないで出店してくれ、とはっぱを掛けられているそうで、こういう主婦や農家のおばさんの入会金や年会費を聞くと、驚くほど安いものでした。

不思議だったのは、これだけ海に近い場所でやっているのに、店が海に背を向けていること。店と海の間が、荷物を運んで来た車の置き場になっているため、海に近づくことも、海を眺めることも難しいのです。安全上の理由や、寒い季節の風の問題もあるのかな、と思いましたが、海を肴に朝ご飯というのも気持ちがよさそうだから、ちょっと残念でした。

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交通
八戸中心街から、開催日には、早朝にバスが数便あり。20分。館鼻漁港で下車。

リンク
館花岸壁朝市(八戸市役所)

館花岸壁朝市(八戸観光コンベンション協会)
館花岸壁朝市(うきぱる)

八戸市役所
八戸観光情報
八戸観光コンベンション協会

宿泊施設のリスト
八戸市の宿泊施設

参考文献
館花岸壁朝市(うきぱる)

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館鼻岸壁朝市

        Photo by Daigo Ishii