南西部の建築探訪 教会巡礼 - 1:
サン・ハビエル・デル・バク教会 - 1
(ツーソン、アリゾナ、アメリカ合衆国)

アリゾナ南部、1775年に創建された町ツーソンの郊外、低いブッシュの続く原野の中に、「砂漠の白い鳩」と呼ばれるサン・ハビエル・デル・バク教会が、立っています。

スペインの植民地だった1692年、イエズス会のキノ神父が、最初にこの地を踏んで布教の礎をつくり、それから1世紀近く経った1797年に、イエズス会を引き継いだフランシスコ修道会が完成させました。

精緻な植物文様や竹のような柱で飾られた褐色の入口周りを除けば、名の通り、プラスターの白い肌が、強い日差しに凛と輝いています。本来は、対称につくられるべき二双の塔のうち、片方の屋根のキューポラは当初からありうませんでしたが、その不完全なバランスが、かえって、建築に繊細な時間の影を落とします。

外も中も、白く際立った教会は、広い南北アメリカ大陸、スペイン人が足跡を残した場所では、そこかしこに現れます。ただ、この教会の扉を入ったとき感じた白さは、今まで見た教会の白さとはどこか違いました。

写真にすれば、バロックと先住民の文様が融合した祭壇が圧倒的ですが、実際の空間に立つと、汚れ一つない白さというよりは、何度も洗濯を繰り返した末に出るような、ぴかぴかではないが、洗いざらした清潔な白に、先ず意識が向きました。

バロックの教会には、プロテスタントの宗教改革に対抗して、信徒を引き付けるべく、劇的な空間へ発展した経緯がありますが、ヨーロッパのそういう変化から遠い新大陸では、先住民の中に溶け込んで行くための場として、自由度が高かったのかもしれません。

外の欠落感が、内部では、完全な白でないことに置き換わり、近づきやすさをつくります。時間に移ろうはかなさが、つねにつきまとい、絶対的で永遠の存在になることを押しとどめます。

夏には、50度近くになる、暑く、乾燥した地では、強いハレーションの白ではなく、涼やかな木陰のような、影のある白さが、オアシスみたいに、暑さに疲れた身体に心地よく染み込んで行きます。

そして、その白い優しい光の中、鹿やうさぎ、かたつむり、蛇など、アリゾナの地で見られる身近な生物が、浮彫に、巧みに埋め込まれ、聖人と共存しています。

先住民が、そういう一つ一つを手がかりとして、キリスト教との距離を近づけたのかもしれない、そう思える場所でした。

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交通
ツーソンのダウンタウンから車で約20分、空港から車で約10分。
ツーソンのダウンタウンから、公共バスシステムSan Tranで、Roy Laos Transit Centerへ行く。公共ミニシャトルバスSan ShuttleのRoute440に乗り換えて、San Xavier Missionで下車。約40分。

Sun Tran
Sun Shuttle

リンク
Mission San Xavier del Bac

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旅行の際に調べた情報であり、評価については、各人でご確認下さい。

参考文献
"San Xavier - The Spirit Endures" (Kathleen Walker, Arizona Department of Transportation, State of Arizona, 2009)

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サン・ハビエル・デル・バク教会 (1797)

        Photo by Daigo Ishii