バイオスフィア2
(オラクル、アリゾナ、アメリカ合衆国)

Biosphere 2は、生物圏Biosphere 1である地球に対して、第2の生物圏として、アリゾナに構想された施設です。宇宙空間での自立居住の可能性を実験するため、人里離れた乾燥地帯に建設されました。

1991年に、8人の専門家が、外界との接触を切断して、実験生活を始めました。食料も水も、すべて、閉鎖された施設で生産する設定でしたが、人間が想像していた以上に、自然は微妙で、予測した通りには、ことは進まず、過酷な生活の末、2年あまりで、実験は終了しました。

例えば、巨大な温室では、風が吹かなかったため、木が育たなかったそうです。風に抵抗する力が、幹や根を成長させる源だったのです。あるいは、晴天の非常に少ない冬が続いたせいで、食物の生育が悪くなり、食料調達に資料を来たし、また、不活性な光合成のため、二酸化炭素濃度が上昇し、外部からの酸素注入が必要となりました。

今、施設は、アリゾナ州立大学に引き継がれ、環境実験施設として利用されています。成果までは、ツアーでは分かりませんが、少なくとも、宇宙空間は想定していないようです。

ピラミッド状のガラスの温室では、いくつものウィンドマシーンが、風をつくり、それらしく、植物が育っています。温室は、いくつにも分かれ、それぞれ、池をつくったり、霧を噴霧させたり、あるいは、温度を上げ湿気を除去したりと、温度や湿度の状態を多様にし、乾燥気候から熱帯気候までつくり出しています。さながら、気候体験ミュージアムの相。

世界有数の巨大温室の中に、異なる気候が隣接する比較効果はあるでしょうが、植物相は再現しても、動物相は限定的なようですから、環境の中の連鎖まで含めた気候までは行きません。元々からして、人間にとって有効な人工的気候の創出の実験であり、その下で、生命を維持するための食物や空気が、どのように供給できるかを研究する場だったのです。

ただし、実験中は電気が外部から供給されたという話を読むと、エネルギーの自給を解決しない限り、机上の空論のままであり、その先の現実に踏み出すのは難しそうです。

受付から温室に行くために、見学者は、研究者の宿泊村を抜けて行きます。意外だったのは、効率的な実験施設同様、宿泊棟も、工業化住宅風かと思いきや、コンクリートに、土壁を塗り、サンタフェ風に仕上げた住居だったことです。建築家としては、なんでこの施設に、この住居という感じですが、こんな孤絶した場所に暮らすのであれば、研究施設はともかく、住まいの部分は、ほっとするありきたりの形式がいちばんということでしょうか。

2年間、過酷な閉鎖生活をした8人の住居も、ほんとうにふつうの家の部屋という雰囲気。研究が目的であって、研究が生むストレスに対して、住まいは、何も主張のないのがいちばん、という感じです。

一見すると、対照的な実験施設も、宿泊棟も、実は、建築や空間に何も期待していない、ということでは、同じかもしれません。そのあたりが、同じアリゾナでも、パオロ・ソレリによる生態系都市Arcosantiとの違いでした。

荒涼とした乾燥地帯の自然と、そこに忽然と現れるBiosphere 2の対比は、絵になっていますが、総合評価しては、Biosphere 0.02ぐらい。地球のNo.2を自認するのは、アメリカらしいけど、実験成果も含めて、もう少し謙虚になりましょう。

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交通
フェニックスより車で約2時間。
ツーソンより車で約50分。

リンク
Biosphere 2

宿泊施設のリスト
Arizona Inn
Canyon Ranch
Hilton Tucson El Conquistador Golf & Tennis Resort
Hotel Congress
Lodge on the Desert
Loews Ventana Canyon Resort
Westward Look Resort

Americas Best Value Inn Tucson
Days Inn Tucson Convention Center
Hotel Tucson City Center InnSuites
Motel 6 Tucson - Congress Street #50

Catalina Park Inn
Desert Dove B & B
El Presidio B & B
The Royal Elizabeth B & B Inn
The Big Blue House Inn
Armory Park B & B
旅行の際に調べた情報であり、評価については、各人でご確認下さい。

参考文献
”バイオスフィア実験生活 - 史上最大の人工閉鎖生態系での2年間”(アビゲイル・アリング+マーク・ネルソン, 講談社, 1996)

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バイオスフィア2 (1991)

        Photo by Daigo Ishii