ルーズベルト・ロウ
(フェニックス、アリゾナ、アメリカ合衆国)

日本で暮らしていると付いてしまう癖、電車やバスでの居眠り。

そういう癖は、第三世界のスラムを走るバスでも抜けませんし、フェニックスのLRTでも、乗り心地のよさに熟睡してしまいました。ちなみに、車両は日本の近畿車両製です。気が付けば、ホテルのあるダウンタウンを、はるかに乗り過ごし、寝疲れで、ぐったりと引き返す途中、 すごい人出が目に入り、迷わず下りてみました。夜8時過ぎのことです。

大きな通りが歩行者天国になり、なにやらお祭りのようです。ただし、よく見ると、屋台に置かれているのは、絵やオブジェ、デザインTシャツというようなものばかり。「何だろう?」

四つ辻に机を出して受付をしている関係者らしき女性が、手持ち無沙汰にしていたので、「誰が組織しているのですか?」と尋ねると、「民主党」との答え。「えっ」と、よく見ると、オバマ大統領のちらしが置かれていて、これは民主党の支援集めで、勘違い(2008年のことでした)。彼女に教えてもらい、主催者のテントに向かいました。

ルーズベルト・ロウ、それがNPOの名で、歴史的な建物が点々と残るものの、荒廃していたルーズベルト通りを、アートで再生しようというグループでした。世界中、どこもかしこも、まちづくりの最後の頼み綱はアートなのでしょうか。

通り沿いの古い建物を、次々と現代美術のギャラリーにリノベーションしている彼らが、月に一度、第1金曜日の夜に開くのが、このArt Walkだったのです。テントは50ドル、路上パフォーマンスは無料で、それが、1.5キロの沿道を切れ目なく埋めています。

絵あり、ロック音楽あり、コスプレダンスあり、デザイングッズあり。素人も玄人も勝手に展示し、パフォーマンスしているアンデパンダンな状態。はっきり言って、すごい作品は少なかったですし、ディナーをして来るからなのか、食事と言ったら、レストランとファストフードが1軒ずつ以外、露天はまったくなし。

歩き回るだけしかない、そんな夜市なのに、どうみても、数千人の人出で、夜10時になろうというのに、小さな子供連れの家族がたくさんいます。この日のいちばんの収穫は、「深夜の現代美術の画廊のドアの前で、若夫婦が、子供のおむつを変えている」光景。何だか、ロートレアモンの有名なシュールレアリスム句みたいではありませんか。

歩いている人をほとんど見掛けないフェニックスでは、人波にあふれた一郭こそが、アートや美食以上に、お洒落なのかもしれません。

うまいなと思ったのは、週末の昼間ではなく、金曜日の夜遅く、という時間設定。昼間の健全さとは違う、清濁すべてを呑み込むような夜の力と、全米有数の成長率を誇る若い都市のエネルギーが一緒になり、荒削りだが、新しい動きが生まれる瞬間に立ち会っているようです。

居眠りも、ときには、乙なもの。

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交通
フェニックスのダウンタウンからLRTに乗って、Roosevelt/Central Avenue駅まで約5分、駅からすぐ。

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         Photo by Daigo Ishii