ジェフリー・バワの建築:
ブルーウォーターホテル
(ワドゥワ、スリランカ)
ザ・ビーチ・ニゴンボ
(ニゴンボ、スリランカ)

ブルーウォーターホテルは、コロンボから南に1時間弱、都市圏のエッジに位置しています。今、スリランカで人気の高いホテルの一つのようです。

高い塀を抜けると、外の世界から隔絶されたランドスケープが現れます。大きな芝生に、椰子が格子状に(近い形で)植えられ、その間を、池に挟まれた長い歩廊が通っています。シンプルな庭が、これだけの大きさで広がると、平明さに、すがすがしい気分です。

歩廊を進むと、ホテルのメイン棟と客室棟が、直交して立っています。敷地の端まで続く3階建ての水平な建築の向こう側は、街道側とは趣を変えた、ビーチに続く庭園。プールの形も不定形になり、椰子もアットランダムに配置。意図的なのかどうか、枝振りも、軽くスウィングしている感じです。そこに、椰子の浮き島や、階段状のパーゴラも加わりますが、いたずらに複雑にしたり、エキゾチックにつくってはいないので、動きはあるが、節度のあり、洗練された屋外空間です。

特徴のない平坦な土地が、魅力的な作庭術によって、居心地のいいランドスケープに生まれ変わっています。それなのに、どこか物足りなく感じるのも事実でした。

元々が、場所の力の弱い敷地だったから仕方ないのでしょうが、カンダラマホテルで、場所の本来のランドスケープと、建築のランドスケープが重なり合ったときのような、特別な空気が感じられません。パブリックスペースのほとんどが、同じ水平面にあって、高さ方向の動きがないことも、一因のようです。

建築は、直線状プランで、同じ要素が繰り返すだけ。これも、地面レベルのランドスケープが豊かなだけに、対照的に、いっそう単調に映ってしまいます。好意的に見れば、ランドスケープが引き立つようにデザインを抑えたと言えなくもありませんが・・・。

さて、今度は、コロンボから逆方向に1時間ほど走ってみましょう。ニゴンボの市街を超えると、海岸沿いにビーチリゾートが続きます。その一つ、広いビーチに面して立つザ・ビーチもまた、バワの作品。元々は、ロイヤルオーシャニックホテルという名前でしたが、大規模な改装を機に、改称しました。

カンダラマホテル同様、コンクリートの柱梁によるふつうの箱形の建築で、ちょっと間違えば、おもしろみのないホテルになりかねません。その上、平地に立つので、場所の個性もありません。

それが、2階にレセプションを上げて、パブリックスペースを2層にし、高さ方向の動きをつくったこと、樹木の浮き島のある吹抜のプールを挿入したことなど、ちょっとした仕掛けの効果で、思いのほか、変化に飛んだ空間になっています。動くに連れて、視線の高さが変わり、眺望や空間の見えも変わって行くので、それほど広い訳でもないのに、いろいろなシーンと出会います。それがまた、ホテルの中に広がりを呼び込みます。

どこまでがオリジナルかは分かりませんが、外観から客室の内装まで、品のいいアジアンテイストでまとめられているのは、心地よい反面、流行に迎合している感がなくもありません。それでも、ところどころに現れる、オリジナルから変えようのない部分に息づくバワの空間術、それが、同じようなアジアンテイスト調のホテルから、少し距離を置いた空気を付与しているようです。

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ブルーウォーターホテル - Google Maps で場所を見る
ザ・ビーチ・ニゴンボ - Google Maps で場所を見る

交通
ブルーウォーターホテル:コロンボ中心街から車で1時間弱。
ザ・ビーチ・ニゴンボ:コロンボ中心街から車で1時間強。コロンボ空港から車で15分程度。

リンク
ブルーウォーターホテル
ザ・ビーチ・ニゴンボ

参考文献
Geoffrey Bawa the Complete Works (David Robson, Thames & Hudson, 2002)

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ブルーウォーターホテル (1988)

ザ・ビーチ・ニゴンボ (1986)

        Photo by Daigo Ishii