ゴールのコロニアルホテル:アマンガラ
(ゴール、スリランカ)

ガイドブックのロンリーブラネットによれば、アマンガラは、アジアでもっとも豪華なホテルの一つとのこと。どれどれ、泊まってみましょう。

元々は、17世紀後半にオランダ植民地政府の役人の住居としてつくられ、一時、東インド会社の職員住居も併設していたそうです。

1863年、英国人が買い取り、オリエンタルホテルとして、営業を始めました。ヨーロッパとアジアを結ぶ客船の寄港地として、活況を呈していた時代です。ニューオリエンタルホテルとして、新たな経営者の下、再オープンしたのが19世紀の末。それをアマンリゾートが引き継ぎ、リノベーションをし、2004年再々オープンしました。

宿泊しての印象を簡単に言えば、「贅を尽くしたシンプルさ」でしょうか。これ見よがしな高い材料を使う訳でも、装飾や華美な調度品で埋め尽くしている訳でもありません。元々の壁を丁寧に漆喰で塗り直し、床は、昔と同じように、磨き抜かれた厚い無垢板が貼られています。新しく加えられた設備も、家具も控え目。200年前の原型を活かしています。

スパ棟や庭園棟、プールの東屋は、後から付け加えたものでしょうが、限られた敷地の中に、注意深く埋め込んでいるので違和感はなし。建物や坪庭の間を、動線が巧みに曲折し、景色が変化して行く様は、日本の茶室の庭のアプローチを彷彿とさせ、小ささの割に、息苦しさがありません。

そんな小ささは、特別なゲストのための隠れ家という空気をつくる仕掛けとなり、静かで落ち着いた居心地を提供します。ただ、時に、美しくミニマリスティックにリノベーションされた分、スリランカのゴールにある必然性は弱まり、場所の気を感じたいゲストには、物足りないかもしれません。そして、原型を大事にしているものの、本当のコロニアルホテルが持っていた時間の蓄積が消えているのも事実です。

正直を言えば、ほとんど眠れませんでした。床は、同室者が歩くと大きく鳴り(昔の建物だから仕方ありません)、トイレは、ドアが閉まらない形式なので水洗音が反響し(愛し合う同士なら喜びかもしれません)、ベッドの金物が呼吸するたびにぶるんぶるんうなり(長い滞在であれば解決するでしょう)、静かなだけに空調音が響きます。視覚的デザインには力を入れているが、聴覚的デザインには無頓着な感じでした。

そんなこんなでも、悪印象がないのです。視覚的な心地よさ、シンプルであることのすがすがしさ、そして、きちんとしているが過度でないサービス、それらで、帳消しされてしまいました。

そして、ゲストに出される午後のお茶のスコーンのおいしさと言ったら!。ディナーもべらぼうに高いだけあって、洗練されたスリランカ料理でしたが、この素朴だが、滋味にあふれたスコーンにはかないません。

そう、味覚的デザインもばっちりなのでした。

余談ですが、18世紀半ば、フィアンセを頼ってスリランカに来たものの、相手が結婚していたため、フランスへ帰国しようとしていた女性がいました。このホテルで、ゴールで弁護士をしていた男性と出会い、結婚に到ったとのこと。それが、ジェフリー・バワの祖父母のなれそめでした。

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交通
コロンボから鉄道、または、車で3−4時間。ゴール駅から車で5分、徒歩15分程度。

リンク
Amangalla
Amanresorts

参考文献
Amangalla-Formelly New Oriental Hotel (Joe Simpson他、Amangalla)
Lonely Planet Guide 'Sri Lanka' (Lonely Planet Publication, 2006)

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アマンガラ (17世紀)

        Photo by Daigo Ishii