アヌラーダプラの遺跡地区 - 2: 
ルワンウェリ・サーヤ大塔
(アヌラーダプラ、スリランカ)

ルワンウェリ・サーヤ大塔は、スリー・マハ菩提樹と並ぶ、アヌラーダプラのもっとも聖なる場所です。白く塗られた大きな塔は、アヌラーダプラのランドマークとして、遠くからも望めます。

紀元前2世紀の建立当時は110mの高さがありましたが、その後の変遷や荒廃で小さくなり、今は、55mです。

直径約80m、水泡を模した覆鉢型の白いストゥーパは、広い石貼りテラスの中央、煉瓦と石による3段の基壇の上に立っています。ストゥーパ本体も煉瓦を積み上げたものです。沈下を防ぐために、建設時、砕いたライムストーンと粘土でつくった5m以上の深さのある基礎を、象に踏み固めさせてつくったそうです。

ストゥーパの煉瓦を積み上げる前、基壇の上に、色鮮やかな石で、胸の形をした部屋をつくり。そこに、宝石で作った菩提樹と金の仏像を安置したという伝説もあります。これも、今は、煉瓦の奥に埋もれ、確かめようがありません。

上部の四角い部分は、平頭(ひょうず)と言い、インドでは、仏舎利を納めることの多い場所で、その上の尖塔は、本来は傘の形をした、高貴の象徴である傘蓋(さんがい)のバリエーションです。また、ストゥーパの縁に立つ建物のファサードのような造形は、石台と呼ばれ、スリランカ最古の彫刻との説もあるようです。

日没近く、大塔を訪れると、スリランカ仏教の声明であるピリットが流れて来ました。生演奏ではなく、スピーカーからでしたが、朗詠と打楽器が奏でるその音が、暮れゆく空に響き渡ります。

平板でゆっくりとしたリズムは聴覚を、そして、そびえ立つ白い壁の、明度が段々とおぼろになって行く様は視覚を、朦朧とさせて行きます。小1時間ほどテラスに座り込み、その中に身を置いていると、次第に、半睡状態のように意識は暮れ掛かります。ある種の宗教的体験の入口が開かれたようにも、あるいは、古代の時間へスリップしたようにも感じる時間でした。やがて日も暮れ、ピリットが終わると、大塔は、明るくライトアップされ、心地よい、いつもの夕が戻って来ました。

翌朝、明るい光の下のルワンウェリ・サーヤ大塔は、まだらの肌を現していました。弱い夕の光の下での、素材感も立体感も消えた、白い姿が幻のようです。夜半の雨の影響でしょうか。近づくと白い表面の下から、水色の塗料が見え隠れしていました。テラスの一郭に、塗料の作業場があり、水色の塗料の痕跡が残っていたので確かでしょう。

夕暮れ時だけでなく、強い昼光の下でも、白を、よりアンリアルな白にする方法、すなわち、大塔の聖性を高める秘訣が、この水色の下地なのかもしれません、早々に、塗り直しが必要だとしても。

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交通
アヌラーダプラまで、コロンボから鉄道で4時間半、車で5時間。アヌラーダプラの駅からルワンウェリーサーヤ大塔までは2kmほど。

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参考文献
世界美術全集11 インド・東南アジア(平凡社、1953)
Mahavihara at Anuradhapura (T. G. Kulatunga, Tharanjee Prints, 2002)

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2007.11 日本語版の文章、写真+英語版の写真

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ルワンウェリ・サーヤ大塔 (紀元前140)

Photo by Daigo Ishii