「小ローマ」ニゴンボ
(ニゴンボ、スリランカ)

ニゴンボは、古くから貿易の中継点として栄え、それは、16世紀に始まったポルトガル、オランダと続く植民地支配のもとでも、続きました。今でも、コロニアル建築やオランダの築いた砦などが残り、その記憶を伝える街です。

地元の人は、ニゴンボのことを、「小京都」ならぬ「小ローマ」と呼んでいます。決してローマのような街ではないですし、この歴史あるスリランカで、雛型を、はるか遠い異国の地に求めるのにも、少し違和感を感じますが、キリスト教徒の多いスリランカ西海岸の中でも、ニゴンボは、キリスト教のイメージにあふれた街です。

町の大きさの割には、教会が多く、街角や道端などいたるところに、日本のお地蔵様や、町内ごとの祠のように、小さなキリスト像やマリア像が置かれています。キリスト教との距離の近さということでは、ローマなみなのかもしれません。

しかし、昔からこの地で育まれてきた、民衆の信仰の素朴な発露のように見える像の設置は、古くからのことでもなく、自然発生的でもないそうです。

19世紀末、スリランカの低地地方で生まれた仏教復興運動により、仏教徒とキリスト教徒の間にあつれきが生まれ、衝突が起こりました。植民地支配と結びついたキリスト教徒に対する仏教徒の抵抗でしたが、キリスト教徒の側からすると、そうやって高まった仏教の存在感を脅威と感じ、対抗策として行ったのが、自分たちのエリアを示す、これらの像の設置でした。

一見すると、現在のニゴンボは、のどかな部分もあれば、活気のある商店街もあり、少し荒れ果てたところもある、スリランカのどこの地方にもありそうな町です。しかし、今でもこれらの像がきちんと世話されている様子からは、ただ、信仰心が篤いというだけでなく、スリランカの他の地方とは違う、この地方におけるキリスト教徒の存在感、あるいは、仏教徒とヒンドゥー教徒の衝突ばかりがクローズアップされるスリランカが、もっと複雑で重層的な宗教のあり方を抱えていること、そういうことが読み取れるのかもしれません。

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交通
コロンボ空港から車で20分。コロンボ市街から車で1時間。

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参考文献
地球の歩き方「スリランカ」(ダイヤモンド・ビッグ社、2007)
スリランカー人びとの暮らしを訪ねて(渋谷利雄・高桑史子編著、段々社、2003)

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ニゴンボのさまざまな教会と時計塔

ニゴンボの街中にちらばるさまざまなキリスト教の祠やイメージ

Photo by Daigo Ishiii