「リー・クアンユーの国」シンガポール - 1(シンガポール)

シンガポールを歩き回って感じたのは、「映画のセット」のような味気なさでした。

きれいな町ですし、意外と古い建築も残ってますが、角を曲がると、思いがけない風景が現れるなんていう街歩きの楽しさは、あまり期待できません。どこもかしこも、きちんと整備されている、というか、されすぎて、自分だけの風景を発見できないのです。

代わりにあるのは店歩き。と言っても、世界一律のブランドショップは、わざわざシンガポールに来る理由としては、もう一つですし、中国文化にマレー色が反映されたプラナカン文化は、可愛げですが、民族のるつぼの生む刺激的な文化は、まだまだです。

住むには暮らしやすいし、海外旅行初心者には安心だとしても、旅慣れた人には、どこか物足りません。リピーターの低下にシンガポール政府が悩むのも、むべなるかな。

しかし、こういう街が、赤道直下の東南アジアにできたことが、実はすごいことだったのです。

イギリスの植民地だったシンガポールの独立は、1965年。それも、心から望んだというよりは、マレーシアから見捨てられた形での独立でした。

その頃のシンガポールと言えば、小さな国の中で共産主義と反共の対立が繰り広げられ、それに民族対立も重なり、混乱を極めていました。イギリスの後ろ盾を失い、おはこの集散地貿易も、周辺国からの締め出しで、不振をかこってる始末。

市民が厳しい生活を送っていた、そんなどん底のシンガポールに現れたのが、後に首相となるリー・クアンユーでした。彼がしたことは、西欧のような土壌のない地に、民主的で経済的に安定し、清廉で豊かな国をつくることでした。

「リー・クアンユー回顧録」には、敵対勢力の工作や国民の反発の中で、制度や習慣を変えて行く様が、詳しく、そして、生々しく描かれています。

物足りなさは、実は、停滞した制度を、リー首相が、一つ一つ改善して行った成果だったのです。

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交通
シンガポール全域。

宿泊施設のリスト

参考文献
リー・クアンユー回顧録(日本経済新聞社、2000)

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シンガポールの街並

         Photo by Daigo Ishii