青森の屯所 - 2
(五戸・弘前、青森、日本)

「ねぶたん」さんのホームページを見ると、八戸地方には、かなりの屯所が残っているようですが、写真で見る限り、ほとんどが時の経つがまま、積極的な手立ては施されていません。

その中で、例外とも言えるのが、八戸から20キロ、五戸にある屯所です。

大正2年(1913年)に消失した屯所と同じデザインで、大正11年(1922年)に、町民有志により再建されたものです。正面だけは、昭和15年(1940年)に、新調した消防車を入れるために、増築されたそうです。今も消防車が格納され、現役の屯所として存続しています。

下見板張りの洋風の外観はきれいに塗り替えられ、その上には、赤いトタン板の張られた物見台。八戸中心部の屯所の原型のようであり、こういう風に、良好な形で残され、町のランドマークになっているのを見ると、八戸の進むべき道も見えて来ます。

青森県内でも、昔から文化的戦略に長けた津軽地方に移ると、屯所の未来に、晴れ間が見えて来ます。

弘前公園の西濠の入口に立つのが、紺屋町の屯所です。弘前城下で、古くから紺屋の職人町として発展した一郭に、屯所が建設されたのは、昭和8年(1933年)のこと。地元の名士の寄付でした。建物の右半分が屯所に、左半分が警察の派出所に使われていましたが、昭和57年(1982年)に派出所が、平成16年(2004年)に屯所が移転すると、弘前市に寄贈され、休憩所として公開されるようになりました。

外壁は、戦前までよく見掛けた豆砂利の洗い出し。下見板張りの屯所に比べると、コストも上がります。それを実現したのも、弘前の経済的余裕と文化的土壌なのでしょう。奥には、西濠の桜並木を見事な借景とした和室があり、寝泊まり以上の空間的愉楽に欠けるふつうの屯所との格の違いが、弘前の格に見えて来ます。

西濠の対岸から見ると、桜の並木の上から、今も、物見台が飛び出し、屯所と街並と緑の美しい風景が維持されています。建築の老後の過ごし方として、観光に利用されるのは、王道ですが、現役で活躍する他の屯所からすると、少し淋しくもあります。美しい建物が、元からの機能のまま、町の中で維持されることは難しいのでしょうか。

同じ弘前の寺町、長勝寺構の入口にあるのが、昭和11年(1936年)につくられた西茂森の屯所です。中央を腰折れのギャンブルレ屋根にして、その奥に物見台を取り付けたデザインが、粋です。ここも紺屋町の屯所も、物見台が建物の中に、バランスよくデザインされ、違和感がありません。そのあたりが、弘前の文化力でしょうか。

アルミサッシュやシャッターを旧状に戻せば、その右手にある、明治時代に建設され、歩兵連隊の将校集会所だった正進会館とともに、懐かしい一郭になりそうです。

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Google Maps で場所を見る(五戸町消防団第一分団屯所)
Google Maps で場所を見る(紺屋町屯所)
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交通
五戸町消防団第一分団屯所:八戸駅からバスで35分(1、2時間に1本)、五戸駅前(南部バス五戸ターミナル)で下車。徒歩10分。
紺屋町屯所:弘前駅からバスで15分(1〜2時間に1本)、亀甲町前で下車、すぐ。
弘前市消防団西地区第一分団屯所:弘前駅から西目屋、相馬方面行きバスで20分(1時間に1、2本)、茂林町長勝寺入口で下車、徒歩5分。

リンク
五戸町役場
五戸観光協会

弘前市役所
弘前観光コンベンション協会
弘前総合情報RIng-O Web

宿泊施設のリスト
弘前市旅館ホテル組合

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五戸町字野月 五戸町消防団第一分団屯所

弘前市紺屋町 紺屋町屯所(弘前市消防団西地区団第四分団消防屯所)

弘前市西茂森一丁目 弘前市消防団西地区第一分団屯所

        Photo by Daigo Ishii