八戸に学べ:八戸の市場
八食センター(八戸、青森、日本)

八戸の海の幸を楽しめる場所として、最近は、東京から日帰りツアーも出ているほどの人気の市場が、八食センターです。

開業は昭和55年(1980年)。当時、買い物客による混雑で手狭になっていた陸奥湊の朝市に、移転問題が起こり、若手の商店主が主体となって協同組合を結成し、この地に移って来ました。陸奥湊の公設市場から分家した八食センターに対して、陸奥湊で日曜日に開かれていた朝市が移転したのが館鼻岸壁朝市ですから、問題の解法を見付けるたびに、八戸の市場は縮小せず、力強く拡大して行くのです。そして、結果として、市場の性格分けにもなりました。

新天地は、八戸駅と中心街の中間とは言うものの、両者を結ぶ幹線道路から外れた、現在でさえ、閑散とした空気の漂う郊外です。今や、郊外の巨大な観光市場もショッピングセンターも、珍しくありませんが、当時は、かなり斬新な試みだったのではないでしょうか。中心市街地がまだ元気な時代でしたから、顕在化しませんでしたが、今となってみると、中心市街地にとって、この場所がよかったのか、微妙なところがあります。

陸奥湊の市場の人に言わせると、平成14年(2002年)、東北新幹線の八戸延伸までは、そんなに繁盛してなかったよ、とのことですが、八食センターのウェブサイトが紹介する沿革によれば、開業5年目の昭和60年(1980年)に年間来店客数100万人を、平成9年(1997年)に250万人を突破したということですから、外野が見るよりは、順調な事業だったのです。

現在、8万平米の敷地に7千平米の建屋が立ち、そこに60店の市場系専門店、10店の飲食店、そしてイベントスペースが入っています。

市場系の専門店の中には、青果や菓子の店もありますが、メインは、やはり鮮魚。雰囲気としては、卸売と小売の中間の雰囲気で、陸奥湊のような間口の狭い個人商店ではなく、大量の来場者があっても人をさばける広い通路の両脇に、大きな魚屋がいくつも軒を連ねています。

値段は、一切れ単位にすると、陸奥湊よりは少し高い感じがしますし、冷蔵設備が充実した大きな店のメリットとして、どちらかと言えば、小分けよりは、まとめ買いの客や大口を想定した商売となっています。単身者世帯に向いているのが陸奥湊の朝市なら、こちらは2世代同居世帯向きと言ったところです。

とは言え、大きいからと言って、各店が何から何まで網羅した、同じような品揃えという訳でもなく、干物に強い店もあれば、蟹が幅を利かせているいる店もありました。そして、試食が充実しており、それだけで、腹が一杯になる楽しみもまた、規模が大きい店故のメリットなのでしょう。

八食センターのもう一つの楽しみは、各店で買った商品を、その場で自分で焼いて食べることのできる「七厘村」。ただし、今のところは、古川市場ののっけ丼のように、小分けした商品をあまり売っておらず、少人数だと、いろいろな魚を楽しみづらいところがあります。

写真を整理していて、外観の撮影を忘れたのに気が付きました。正直言えば、忘れるぐらい味気ないものでした。陸奥湊のように、古くてきれいとは言えないが、風情がある市場でもなく、かと言って、無機的なところがクールな工場や倉庫でもなく、郊外のスプロール地区そのものの単調な建築に、中途半端な色やデザインが加わった、申し訳ないけれど安普請な建築です。内部も人工照明が頼りの単なる四角い箱以上ではありません。ソフトは充実しているが、ハードには関心の薄い八戸を象徴するような施設です。

ふつうの客が、建物のデザインというハードそのものよりは、清潔が保たれ、広々として使いやすく、品揃えが豊富という表面的部分を評価するのは致し方ないとしても、もし、このソフトのプログラムが、飛んでもなくずば抜けたデザインと結びついていたら、どれだけの観光的吸引力を持ったことかと、ちょっと残念になります。

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交通
八戸駅からバスで10分(1時間に1本、東京からの新幹線に対応)、八食センターで下車。

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参考文献
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        Photo by Daigo Ishii