青森の市場:アウガ新鮮市場
(青森、青森、日本)

青森の駅前の再開発商業ビル「アウガ」。いかにも駅前再開発風の外観に、わざわざ足を運ぶ気がせず、青森を訪れても素通りしていましたが、たまたま地下の食品売り場「新鮮市場」の看板が目に入りました。営業時間が朝5時から、と書かれているのです。ビルの地下で朝5時から営業って、どういうこと?古川市場でさえ、朝7時からなのに。

駅の地下道に下りるような味気ない階段を下り、いかにも再開発ビル風のステンレス框のガラス戸を開けると、そこには、予想していたようなこぎれいなデパ地下風食品売り場はなく、ほとんど古川市場のような風景が広がっていました。

6本の路地が伸び、その両側に露台が並ぶのも、古川市場と同じ。鮮魚系が巾を占めている店の構成も同じ。どの店も、露台の上に看板を出し、横文字系の店名などなくて、「佐藤利商店」とか「横山商店」とか書かれているのも同じ。ただ違うのは、1階の床スラブのデッキプレートの裏側とダクトを露出させて、青く塗り、デッキプレートからボルトで吊り下げた木のたる木に、鉄骨の赤い梁を渡し、そこに看板を掛けていること。でも、天井付近は照明の加減で暗いから、そういう新しいビルの雰囲気は消え、鉄道の高架下の市場にでも迷い込んだ雰囲気です。

元々隣り合っていた駅前市場と丸青市場が、再開発されて商業ビル「アウガ」に生まれ変わったのが、2001年。ただし、立ち退いてから建設が始まるまで、話がまとまらず、10年近く掛かったそうです。その間、店子は、今は広場になっている青森駅前の空き地に仮設店舗を設け、営業していましたが、膠着した状況が続くうち、後継者の問題などで、立ち退き前に比べ、店の数も減りました。

店のおかあさんの話では、立ち退き前も、広場での営業の期間も、暑い夏以上に、冬がやはりネックで、寒さは、七輪を股の間に挟んでも耐え難いほど、吹雪になれば、外回りの店の露台は雪まみれになっていたそうです。時間は掛かったものの、衛生状況も改善され、商売する環境は格段によくなりました。ただし、広場での営業時に比べれば、売り上げも客足も戻ったとは言え、やはり青函連絡船が運航されていた頃には、かなわないというから、交通が便利になり、乗り継ぎが直行になることは、中継地点にとっても、その駅の真ん前にある市場にとっても、痛し痒しなのです。

それでも、東京で主流となったデリカテッセン風のビル地下の食品売り場ではなく、地元の食材に長け、舌をかみそうな名前のものを売っている店もほとんどない、昔からの店子が生き続けるローカルフードの市場を、この時代、この場所に再現した青森の心意気には、敬意を表します。

それにしても、青森市民は朝5時から買い物に行くのでしょうか。それは次回までの謎。

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交通
青森駅から徒歩7、8分。

リンク
アウガ新鮮市場

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アウガ新鮮市場

        Photo by Daigo Ishii